子どもを叱ることは非常に難しいことです。
ついつい感情的に怒ってしまったり、叱っても子どもが同じことを繰り返したり、どのようにすれば、効果的に叱ることができるのでしょうか?
もくじ
そもそも叱るのはなぜ?
親や教師は子どもを叱ります。ですが、そもそも叱るのはなぜでしょうか?
してはいけないことを注意する
親は、子どもに対して、危険な行為や、不道徳な行為つまり「してはいけないこと」を抑えたいと考えます。叱ることで、そうしないように仕向けたり、望ましい行動に変えたりしていきます。子どもはルールを知らないからこそ、周囲の大人から叱られたことを通して、社会で認められる行動を理解し、社会性を身につけていくのです。
例えば、「ハサミを人に向けてはいけない」と言われていたにも関わらず、人に向けてしまって子どもが叱られたとき、その後、子どもは叱られないように気をつけるようになっていきます。注意されたことにより、「これをしたら、また叱られてしまう」という気持ちから、してはいけないことを避けるようになるのです。
してほしいことを考えるきっかけにする
叱ることは、してはいけないことを禁止・抑制するだけではありません。いずれは、子ども自身も成長して、自分の考えで行動していかなくてはならないのです。「叱られるからやらない」ではなく、叱ることをきっかけに「どのようにすればいいか」「ふさわしい行動は何だったか」を子どもに考えさせることも重要な目的です。
特に年齢が上がっていくにつれて、「何がいけないか」を子どもに説明させるような叱り方が重要になってきます。そうすることで、子ども自身がルールを自分のものにできるようになるのです。
叱るときに気をつけるべきこと
それでは、より効果的な叱り方とはどんなものでしょうか?
具体例をみながら、注意点を確認しましょう。
①「怒り」の感情を抑える
明治大学教授の諸富氏によると感情的にならないことは重要です。
「怒るのは感情ですが、叱るのは教育です。怒りの感情を込めてしまうと、子どもは、自分は嫌われている、親に憎まれている、自分は愛されていないと思い込んでしまいます」
(引用元:子どもを叱るときにしてはいけない6つの約束 | プレジデントオンライン))
親が忙しいとき、子どもが何度言ってもなおらないとき、親も人間ですから、感情的になってしまいます。特に子どもが望ましくない行動をしていると、カッとなってしまうこともあるはずです。ですが、叱るときには、感情的になったり、怒鳴ったりしてしまうと、子どもは自分の人格を否定されたように感じるので、気をつけましょう。叱る=怒るではありません。
具体例
朝の忙しい時間帯に、まだ子どもが着替えられていない時、急いでいるあまり、「早く着替えなさい!」と怒鳴ってしまうということもあるでしょう。そうではなく、「学校の時間だから、洋服に着替えようね」と具体的に指示を出すようにしましょう。
②理由を言わずに叱らない
叱ることでひとつの重要な目的は、「してほしいことを考えるきっかけにする」ことです。そのためにも、理由も言わず、頭ごなしに怒ることは危険です。
実は、子どもは「なぜいけなかったのか」も伝えるような叱り方には反発が弱く、「ダメな子」「もう知らない」という突き放すような叱り方には強く反発するのです。きちんと理由を伝えることは、効果的に叱るひとつのポイントです。そして、叱られた理由に向き合うことで、「なにがいけなかったか」を子どもが考えるきっかけにもなります。
具体例
子どもが弟を叩いてしまったとします。「いい加減にしなさい!」と声を荒げることも可能ですが、一度大きく深呼吸をしましょう。「叩かれると弟が「痛い」からやめよう」と冷静にいけなかった理由を具体的に説明することが効果的な叱り方です。
③罰を与えない
ただ罰を与えるということは、子どもたち自身が過ちに向き合うという過程を奪ってしまうことになります。罰に対しての注意が高まってしまい、自分のしたことに対する後悔より、親に対してやり返したい、報復感情でいっぱいになってしまいます。
特に、思わず手を出してしまったとしても、体罰を繰り返してしまうことは危険です。
叱る時には、罰を与えるのではなく、具体的な方法を根気よく教えていくことが重要になります。
具体例
スーパーで走り回る子どもに対して、何度注意しても聞かず、「いい加減にしなさい!叩くよ!」ということもあるでしょう。ですが、その場で「他の人の迷惑にもなるから、歩こうね」と伝えることも可能です。それでもいうことを聞かなかった場合、「もう連れて行きません!」と一方的に伝えたり、体罰を加えたりすれば、報復感情を高まらせる罰になってしまいます。次の買い物に行く時、「今日は一緒にはいけない。どうしてか分かる?」と自分の誤った行動の結果を経験させるようにしましょう。
④その場で叱る
時間が経ってから叱ってもあまり効果はありません。もちろん、子どもが精神的に興奮しているときは、落ち着くまで待つ必要がありますが、後から行動を掘り返して、「なんでそんなことをしたの!」と叱っても、子どもはなぜ過去のことを言われるのか腑に落ちないのです。
加えて、だらだらと長く叱ったとしても、反省する感情が強くなることはありません。その場で速やかに叱って、切り替えることも重要です。
具体例
子どもが友人を怪我させてしまったとします。パニックになっているようなら、その場を離れて落ち着くまで待ちましょう。「どうして乱暴なことをしたの?」と冷静な態度で、子どもの感情に共感します。その一方で、相手の気持ちを考えさせて、「謝ろうね」と教えるようにします。
⑤子どもに選ばせる
行動を促すことも、叱り方の重要な側面です。
叱ることの最終的な目標は、自分で判断する、つまり自律的に行動できるようになることです。ですから、子どもに考えさせたり、選ばせたりするきっかけを作っていきましょう。
人間は他人の世話になりすぎていると、感謝だけでなく、無力感・自己嫌悪・反感という感情を経験することになります。日常生活の小さなことから、少しずつ選ばせることが重要です。
具体例
例えば、日常的な例からいうと、宿題に関して「ちゃんとやりなさい!」と叱るだけでなく、「夕飯前と後いつやる?」と選択させるのです。あるいは、親から借りた道具を片付け忘れる子どもに対して、「もう貸さない!」とだけいうこともできますが、「借りたら必ず返すこともできる。道具を使える特権を捨てることもできる。どちらか選びなさい」と具体的な提案をすることもできます。具体的に考えることで、子どもも自律的に考えていけるようになるのです。
おわりに
子育てに関わる環境はより複雑になっており、親の生活にも余裕がないことも多いでしょう。それでも、子どもが親から受ける影響は大きなものです。
誰もが悩む子どもへの叱り方。少しずつ意識して、効果的な叱り方を実践していきませんか?
参考リンク
アデル・フェイバ, エレイン・マズリッシュ(2013年7月)『子どもが聴いてくれる話し方と子どもが話してくれる聴き方大全』(きこ書房)
子どもは「叱り」をどのように感じているか?|教育心理学年報
叱りの意味を再考する〜子どもの成長を促す叱りとは|梅光学院大学子ども学部
子どもを叱るときにしてはいけない6つの約束 | プレジデントオンライン
子どもに伝わる「しかり方」8つの具体例 | プレジデントオンライン