もくじ
とりあえずみんな行っているから学校へ行かせる、という考え方は捨ててほしい
―――子どもが不登校になりそうだという保護者に、どうアドバイスしていらっしゃいますか。
まず、ご自身の中にある先入観を取っ払っていただきたいなと思います。
学校に行かないなら、フリースクールという道がまずあります。また文部科学省も、不登校の児童生徒が自宅でITを使って学習したことで、学校に出席したとみなすケースを認めつつあるなど、選択肢は広がりつつありますね。「教育」に対する答えは1つではないんです。答えが分からないから不安になってしまうと思うんですが、そのためにも、答えを見つけるための判断材料を増やしたほうがいいですね。
勉強に関しては、学校に行かなくても勉強するツールはたくさんあります。また、僕自身は、不登校から定時制高校に通い、その後大学に進学して今があります。小中学校は行かなくて本当によかった。でも、大学時代は本当に楽しかったから行ってよかったと思っています。
いろいろなロールモデルを知り、判断材料を持った上で、自分の子どもはやっぱり学校に通った方がいいと思えば、どういう学校がいいかを考えたらいいですし、この子の場合は学校じゃない方がいいなという場合には、新たな道を模索したらいい。転校したら輝ける子もいます。とりあえずみんな行っているから学校へ行かせるという考え方をまず捨ててほしいなと思います。
ちゃんと学校に行けていても、社会でつぶれる子がいる。その一方で、不登校でも社会で成功していく子がいる
子どもを苦しめたい親はいませんよね。「今はちょっとつらいかもしれないけれど、学校に行った方が将来この子のためになる」、そんな気持ちで親は子どもに学校に行くよう勧めているんだと思います。
でも子どもが「サボりたくて学校に行きたくないんじゃない、無理に学校に行かせないでほしい」と親にSOSを出し、それが親にきちんと伝われば、何が何でも学校に行かせようとする親はいないのではないでしょうか。もしいるなら、「あなたは子どものために言っていますか? 親の世間体で言っていませんか?」と問いかけたくなってしまいます。
進学校に行って有名大学に進んでも、社会に出てつぶれてしまう子はたくさんいます。その一方で、不登校でも成功する子がたくさんいる。「不登校になったら終わり」では決してないんですよ。
子どもの本当の気持ち。お父さん、お母さんには文字が一番伝わる
―――「学校には行きたくないけど、親に心配をかけたくない」と悩んでいるお子さんにメッセージをいただけますか。
まずはこの記事をぜひ、お父さん、お母さんに読んでもらってください。
僕は「学校には、無理に行かなくていいよ」と心から思っていますが、これは感情的に言っているわけではなく、冷静に考えた上でそう思っています。
勉強なら、学校に行かなくてもできる。塾でも家庭教師でもいい。ひょっとすると、学校で1人の先生にたくさんの人数で教えてもらうより、家やフリースクールで勉強した方が、勉強ができるようになる可能性だってある。学校に行くことは決してムダなことではない。でも、学校でやっていることは、学校以外の場所でもできるから安心して大丈夫。
お父さん、お母さんには、学校に行かなくなった場合の1日の予定表を出してみるのもいいと思います。「自分は学校へ行かなかったら、こういうスケジュールで毎日を送ります」って言えたら、きっとご両親も分かってくれると思う。
どんなに言いたくなくても、親とけんかしたくなくても、「どうしても学校に行きたくない」という気持ちは、やっぱり最後は親に言うしかない。でも子どもの立場じゃ、親に話しても「どうしても行きなさい」と言われたら結局負けてしまう。やっぱり、親には、子どもが話すより、文章になっているものを見せるのがいいかなと思いますね。
この記事もそうだし、僕のブログ(小幡和輝オフィシャルブログ https://www.obatakazuki.com/)にもたくさんの不登校の体験談がある。今まで学校に行きたくないと悩んで大きくなった人たちの話をじっくり読んでもらうことで、お父さん、お母さんの固い気持ちが少しでもやわらかくなって、学校に行きたくない君の心に寄り添ってもらえるといいなと願っています。不登校は不幸じゃない、僕はそう思います。
取材後記
親の立場からすれば「学校に行くのが普通」だから、子どもが行きたくないと言い出したときには当然動揺すると思う。けれど、そこが親の腹のくくりどころかもしれない。文部科学省をはじめとして、多様性を認める社会を広げていこうという動きがあるのに、子どもの一番の味方であるべき親自身が古い固定観念に縛られていては、きっと子どもはつらくなる。小幡さんと話していると、不登校の子どもの数だけ多種多様な未来が広がっていくような気がした。
「子どもがどうしても学校に行きたがらない」。もしそうなったら、その次を探そう。親子一丸となって、いくつもの道を模索しているうちに、きっとその子にぴったりな新しい未来にたどりつけると信じたい。
取材・文:小澤 彩/編集:下田 和