子どもたちの手で整える空間 〜大日向小学校体験記3〜

近谷純子 2019年10月執筆

開校1年目の二学期、各クラスに転入生を交え、先生方の受け持ちクラスの再編もあり(!)、スタートした。

大日向小学校に来てみて若干想定外だったのは、このグループリーダー(いわゆる担任)の再編にもみえる、学校の「試行錯誤ぶり」だった。

ただし、大急ぎでつけ足すならば、開校直後から感じていた種々の困惑や気持ちの揺れは、ほかの保護者、家族や以前からの友人などとたくさん話すなかで消化されていった。いまは、こうした日々の変化を前向きにとらえている。

(*今回の記事も、あくまで一保護者としての思いをつづっています)

図書室と、ビーズクッション

試行錯誤ぶりを感じたひとつが、図書室だ。

各クラスルームは壁がきれいな色で彩られ、うっとりするような木材を使用して改装された状態で開校を迎えた一方で(大日向小学校は、旧佐久東小学校の校舎を引き継いでいる)、図書室はなんというか、元のまま。クラスルームがガラス張りで明るい雰囲気(裏を返せば、外からも丸見え)なのに対し、図書室のドアはいわゆる学校らしいドアのままで、閉めれば閉じた世界になる。

開校当初、本はホコリをかぶったような棚に雑多に並ぶだけで、さらには図書が入ったダンボールも山積みだった。

そして、その空間には不釣り合いの、カラフルなビーズクッションが多数置いてあった。大人だって人目がなければボフッと飛び込みたくなるような、大型のビーズクッションたち。

そんな図書室に、子どもたちはクラスルームから逃げこむようになだれ込み、ビーズクッションを取り合い、ひどければビーズクッションを投げ合い、あるいは積み重ねまくってその下敷きになって遊ぶほど。その光景にはけっこうショックが大きかった。当然の帰結というか、本は床に散らばっていたりしていて。

「図書室は静かに本を読むところ」という常識しか持ち合わせなかった私には、目の当たりにするのがしばらくつらい場所だった。

はりつめるでもなく、のんびりと


図書室のようす。10月上旬のある日の放課後。

しかし、変わった。

ビーズクッションは徐々にほかの場所に移されたりして、いまは4つ。

取り合いになるでもなく、座りたい子が座っている。いい感じで落ち着いたようだ。

肝心の図書。

それもいまでは分類され、番号ラベルが貼られ、ずいぶん手に取りやすいように並んでいる(途中、図書ボランティアが細々と作業し、夏休み前あたりに、先生方が一気に作業された結果だ)。

そして図書室での約束事も決まり、子どもたちが描いたポスターが貼られ、図書貸出も始まった。

正直なところ、なんで開校当初から図書室がきちんと整備されていないんだ、図書室こそ、居場所として必要な子がいるだろう、と憤りに近い思いを抱いたときもあった(自分自身が、図書室が好きで、必要な子どもだったから)。

でも、子どもたちも変わり、図書室の雰囲気も、けっこう変わった。

10月はじめには、下学年(1~3年生)のクラスの子たちが図書室に集まって、「『本読みのプロ』になる時間」に偶然出くわしたのだが、しみじみしてしまった。

図書室の本は、「歴史」「自然科学」「物語」などに分類されて並んでいますと教えてもらうと「そういえば僕はこの棚の本ばっかり読んでる!」と声をあげる子がいたり、「読む本を自分で決めるのも大切なお仕事だよ」と声をかけられて頑張って選んでいたり、ある子は先生に本を読んでもらっていたり。小さな声で一生懸命読み上げる子もいたけれど、静かな空間。ビーズクッションに数人ずつもたれかかって、もちろん机の前の椅子に座る子もいて。

当初の喧騒を知っているだけに、この図書室での静けさが身にしみた。しかも別にはりつめるでもなく、のんびりとした雰囲気の静けさで。

休憩時間だと気づいた途端(チャイムが鳴らないので、時計を見て誰かが時間に気づくまで静かだった)、弾かれたように本を投げ捨て、飛び出した子たちがいたのはご愛嬌。しっかりメリハリがついていたよ。本を棚に戻せたら、もっと良かったけどね!

もちろん、最初からピカピカで、素敵な場所であってもよかったとは思う。

でもいまでは、ピカピカすぎない状態だからこそ子どもたちはくつろげるのかもしれないとも思うし、もっとシンプルに、図書室、子どもたちの変化を知れたことが、おもしろかった。


図書室の窓に貼られていたポスター。

クラスルームの模様替え!


上学年(4〜6年生)のクラス。こちらも放課後の一枚。

イエナプランスクールらしいとも言えるかもしれない、あえての試行錯誤も。

二学期のはじめ、上学年では、わざわざ自分たちのクラスルーム模様替えのための時間が数回あった。上学年のクラスには9月からの転入生が5人いたこともあり、二学期前に一度グループリーダーが机を並び直していて、親の目にはすっきりきれいなクラスルームに整っていたのだけれど。

自分たちの空間は自分たちで作るということだろう。

6年生のリードで、それぞれの意見を出す。みんなの意見をすり合わせる。

使い勝手や、動線を意識する。

心地よい空間を考える。

イエナプランスクールでは、教室は「リビングルーム」として意識される。

そんな大切な空間だからこそ、曲がりなりにも、自分たちの手で整えるという感覚。

さらには、試行錯誤を繰り返しつつ、一応の着地点を見つけるという体験。

それこそクラスルームにもビーズクッションがほしいと、ずりずり引っ張って持ってきたようだ。先生の机の位置も変わっていた。

そんなふうに試行錯誤を重ねるようすを聞くと、これまでの教室は、ただあてがわれた場所にすぎなかったんだと、いまさら気づかされる。

自分たちの手で整えたからか、いや、そんなステキな因果関係なんてないのかもしれないけれど、二学期は多くの子が、クラスルームから出ることなく、自分の机で、勉強しているみたい(ということは、一学期はそうではなかった?!)。

いやいや、教室の自分の机で勉強するなんて、当たり前だと思われるかもしれないけれど、別に廊下でも図書室でも空き部屋でも、どこでだって自分の課題に取り組んでいいのだ、ここでは!! そんな話もまたいずれ。