薬学部は留年する人が多いって本当?留年理由や留年しないための対策

薬剤師は、就職率や収入面においても安定したイメージが強くあることもあり、薬剤師になることを子供にすすめたことがある親もいるのではないでしょうか。でも同時に、「入学しても勉強についていけるのか?」「国家試験に合格するのは大変?」と不安に思うかもしれません。当記事では、薬学部における留年率や背景、留年しないためにできることなどについて紹介します。

薬学部6年制の現状と問題

2006年度に学校教育法が改正され、薬剤師養成のための薬学教育が4年から6年に延長されました。これに伴い、薬剤師をめざす人は6年制に、研究や開発を目指す人は4年制の薬学部に進学することとなりました。医療技術の進展に伴い、より高い資質を持った薬剤師を育成することを目的とした試みですが、ここ近年、いくつかの問題点が指摘されています。

薬学部の留年率の増加

1つの問題点は、薬学部の留年率が年々高くなっていることです。文部科学省の調査「最低在学年限超過学生数」によると、6年制薬学部の最低在学年限超過学生数(留年学生)はここ数年回復してはいるものの、5〜6年前の平成24(2012)年と比べると上昇傾向にあります。

合計 男子 女子
平成24年 2,017 1,099 918
平成25年 2,979 1,628 1,351
平成26年 3,810 2,034 1,776
平成27年 4,181 2,153 2,028
平成28年 4,144 2,118 2,026
平成29年 3,810 1,864 1,946
平成30年 3,765 1,867 1,898

(出典元:最低在学年限超過学生数|e-Stat

また、読売新聞が掲載した「大学の実力」の調査では、6年制薬学部の退学率は9.3%と、歯学部(7.7%)や医学部(1.6%)より高いことが分かりました。卒業率と退学率の状況から、全体の23%の約2200人が留年か休学で6年以上在籍しているということでした(2015年時点)。

薬剤師国家試験の合格率の低下

もう1つの問題点は、薬剤師国家試験合格率の低下です。厚生労働省が発表した薬剤師国家試験回次別合格者の推移によると、受験者の数は年々増加傾向にありますが、合格率は少しずつ低下しています。

受験者数 合格率
平成24年 9,785 88.31
平成25年 11,288 79.10
平成26年 12,019 60.84
平成27年 14,316 63.17
平成28年 14,949 76.85
平成29年 13,243 71.58
平成30年 13,579 70.58

(出典元:薬剤師国家試験回次別合格者の推移|厚生労働省

6年制に改正された後の大学卒業者が出たあたりの平成24年(2012年)からは、年々ほぼ低下しているのが現状です。

文部科学省の改善に向けての動き

これらの問題について、文部科学省が開催している「薬学系人材養成の在り方に関する検討会」においても議題として上がりました。特に留年率増加の問題については、卒業率が他の大学と比べて極めて低い9学部に対してヒアリング調査を行い、改善へ取り組むよう求めました。より高い知識と技術を備えた薬剤師育成が目的であった改正でしたが、それにともない予期していなかった問題点が懸念されているようです。

薬学部に留年率増加の理由は?

それでは、薬学部の留年率増加の原因について見ていきましょう。

基礎学力の不足

薬学部で留年する学生が増えている1番の原因は、薬学部の増設により、学力の高い人材の確保が困難になったためです。少子化で学生確保競争が激しくなり、受験生に人気の学部である薬学部を開設する大学が急増。その結果、大学が入学者の質を下げてでも定員の学生数を確保しようとし、学力の確認が軽視されていると指摘されています。

また、入学者の質の低下は国家試験合格率に関係しているデータもあります。文部科学省が発表した「平成26年度 質の高い入学者の確保と教育の質の向上に向けてのフォローアップ状況」によると、一般的に、入試の実質競争倍率が高い大学は卒業率および合格率が高い傾向にあり、入試の実質競争倍率が低い大学は卒業率、国家試験合格率ともに低い傾向にあるということでした。

授業についていけない

大学によって違いますが、薬学部のカリキュラムは態度教育、技能教育、知識教育という3つの柱で構成されており、学習到達目標を達成するために1,446項目をクリアしなければならず、他の学部と比べかなり厳しいカリキュラムと言われています。また、ほとんどの大学の薬学部は朝から夕方までぎっしり講義や実習があることが多く、苦痛に感じて授業を休んでしまう学生もいるようです。授業についていけず、留年したり自主退学したりする学生も少なくありません。

試験の対策不足

薬学部は、暗記するべき分量がかなり多く、定期試験の難易度はかなり高いことで知られています。満足な点数が取れないという学生も多くいるのが現状です。また、定期試験の他にも、5年次からの実務実習に参加するための条件となる共用試験、卒業するための卒業試験があり、勉強・対策不足で合格できず、進級・卒業できない要因となっています。

薬学部で留年しないためにできること

それでは、どうすれば留年せずに薬学部を卒業できるのでしょうか? 子供が薬学部に入学する前に伝えたい、薬学部で留年しないポイントを紹介します。

大学選びで卒業率もチェックする

受験する大学を選ぶ際に、偏差値や国家試験合格率に加えて、その大学の卒業率もチェックしてみましょう。例を紹介します。同じような偏差値の、次の大学の中から進学先を決めるとしたら、どの大学にしますか?

大学名 卒業率 国家試験合格率
就実大学 49.0% 89.5%
九州保健福祉大学 46.4% 96.0%
いわき明星大学 36.5% 96.7%
第一薬科大学 21.0% 93.8%
青森大学 61.5% 54.8%
徳島文理大学 63.5% 81.3%

(出典元:【薬学部の選択】偏差値や国試合格率ではなく、「留年率」「卒業率」を見よう。|薬剤師国家試験対策

一見、国家試験合格率が高い大学が魅力的に映るかもしれませんが、薬剤師の国家試験を受けるためには、まず卒業しなければなりません。つまり、上の表の第一薬科大学の場合、国家試験を受験することができるのは、入学者のうち21%のみ、そのうちの93.8%の人が合格しているということに過ぎないということです。多くの私立大学の薬学部では、国家試験の合格率をあげるために、試験に受かりそうな優秀な学生しか進級させないという厳しい基準をとっているところが多いようです。

上の表に出てくる、大学でいえば青森大学や徳島文理大学は卒業率が他の大学と比較して高めです。確かに、国家試験合格率は他大学に比べて見劣りしますが、薬学部において何よりも大切なのは、卒業することです。卒業すれば、たとえ国家試験に合格できなくても最低限大学薬学部卒業という学歴を手に入れることができ、就職にも有利になるでしょう。

とにかく授業に出席する

大学生になってサークル活動やアルバイトなどを始め、忙しくなって授業を欠席がちになる学生も少なくありません。休まず授業を受けていてもついていくのが大変なのに、欠席が続くと単位がもらえなかったり、勉強にもかなりの遅れが生じます。学業を優先し生活リズムを整え、授業はできるだけ休まず出席しましょう。アルバイトは無理のないようにシフトを調整することをおすすめします。

勉強はチーム戦で挑む

薬学部では有機化学、分析化学、物理化学、分子細胞生物学など、かなりの高度な専門分野を学ぶ科目が必須なります。これらを1人で頑張って勉強するのもいいのですが、可能であれば友達数人で一緒に勉強するのもおすすめです。それぞれに担当する科目を割り振り、まとめ資料や過去問を作成し、共有すれば、効率よく試験対策が進みます。

定期試験は過去問を入手

定期試験は、過去問を使って勉強するのが1番効果的です。サークルなどの先輩や、過去問を持っている友人などにお願いして、可能であれば入手します。もちろん、毎年同じ問題になることはないかもしれませんが、過去問を使って対策すれば比較的安心して試験を受けることができます。過去問が入手できない場合は、出題傾向などでもいいので先輩や友達に聞いてみるのもいいでしょう。

明確な目標を立てる

留年せずに薬学部の勉強を乗り切るには、「薬剤師国家試験に合格に向けて勉強する」という明確な目標を立て、授業に出席し、毎日復習・試験対策の勉強を続けることです。また先輩や先生、知り合いの薬剤師などで自分が「こういう薬剤師になりたい」と目標にできる人を見つけるのもいいでしょう。常にモチベーションを高め、継続することが大事です。

まとめ

薬学部で留年しないためには、目標に向かって、継続した日々の学習がとても重要となってきます。大変ですが、人の命に関わる薬についての知識と技術を生かせる、やりがいを感じられる進路ではないでしょうか。

参考

薬学教育|文部科学省
薬剤師国家試験合格発表|厚生労働省
平成26年度 質の高い入学者の確保と教育の質の向上に向けてのフォローアップ状況|文部科学省
薬学6年制の現況と展望 東京理科大学理事長公演
薬学部はどれくら大変なの?|薬学部を目指す! 薬学部を講座
薬学部で留年しないためにするべきこと9選|薬剤師は日本中に浪漫を届けたい
<コラム>下がり続ける薬学部の卒業率|読売教育ネットワーク

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